現在、医療現場において、臨床心理学や行動心理学の知識に基づく「心のケア」が普及しつつある。
しかし、心のケアは諸刃の剣である。
心理学の多くは、人の心を判断し、評価する。各種の標準化された心理テストでは、人々の行動や心理状態を正常と異常の軸の間で評価しようとしたり、人々の心の状態や「人格=パーソナリテイ」を類型化したりする。類型化された人格には当然、社会に適応的でないものなど、好ましくないタイプが定められている。
一見響きのよい「心のケア」には、人々の行動や心理状態を、心理学が規定する「適応」や「成長」といった好ましい状態へと修正し、矯正しようとする性質を抱えているのである。
近代医療システムが人々を管理し統御する、ある種の装置であることが、これまでの医療人類学や医療社会学の研究で明らかにされてきた。
この管理しやすい患者を再生産するシステムという問題点が改善されずに、「心のケア」というツールだけが持ち込まれた医療現場はどうなるのだろうか。
今、このような問題点を抱えた「心のケア」にひき続いて、「スピリチュアル・ケア」の重要性が問われている・・・。
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