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インテグレイティブ・ペイシェント・エクスペリエンス [IPX ]

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ライフサイエンス&ヘルスサイエンスのグランドデザイン

bandicam 2014-06-22 18-52-35-671

「インテグレイティブ・ペイシェント・エクスペリエンス(IPX)」の探究及び構想について着手するにおいて、現代の学術界が目指している理念について確認しておく必要がある。

科学の本質である「科学的原理の発見」と、科学に対する社会的要請である「科学的原理の社会的展開」との関係を、研究教育体系と学術政策という手段を媒介としてどのように融合させ、科学をいかに社会の一部として位置づけていくべきかと言う命題について、今まさに考える時期に来ている。

つまり、「生命現象の包括的・統合的な理解」のためのライフサイエンスと、「人類の福祉に貢献するための人間の科学」としてのヘルスサイエンスとの両立が「インテグレイティブ・ペイシェント・エクスペリエンス(IPX)」を構想するうえでは非常に重要となる。

今から6年前(平成20年)に日本学術会議 1より発表された「今後のライフサイエンス・ヘルスサイエンスのグランドデザイン」においても、その要旨の第1に「ライフサイエンス研究における現状と問題点」を取り上げ、ヘルスサイエンス領域を創設するための在り方を公表(以下)している。

 

要旨1 ライフサイエンス研究における現状と問題点;

これまでのライフサイエンス研究は「生命現象の包括的・統合的な理解とその人類の福祉への貢献」を大きな目標として推進してきた。しかし、ライフサイエンスの研究成果が生命現象の解明のみにとどまらず、人類の福祉に貢献するという認識が社会において切実に共有され始めた現在、これまでのライフサイエンス研究推進の方策に再考が迫られている。(中略)「生命現象の包括的・統合的な理解」のためのライフサイエンスと、「人類の福祉に貢献するための人間の科学」としてのヘルスサイエンスとの両立が重要であるとの認識に基づき、今後の在り方について審議を重ねてきた。本提言は、ライフサイエンス研究の質的変遷に対する対応と、さらに国民の要望の強い「人間」への応用科学としてのヘルスサイエンス領域を創設するために、その在り方について審議した結果を取り纏め、公表するものである。

参照:【日本学術会議 基礎医学委員会・臨床医学委員会合同 基礎・臨床医学研究グランドデザイン検討分科会の審議結果】

 

当時はまだ、「ライフサイエンス&ヘルスサイエンスのグランドデザイン」を提言する段階であった。つまり、「ヘルスサイエンス領域」を設定し、専門の人材育成、研究推進、技法開発などのプラットフォームを構築し、かつその構造が社会に組み込まれるための基盤整備が必要であることを、科学者の立場において認識するに至ったのである。

その認識内容には、科学者の苦悩とともに「新たな理念」を持とうとする態度が伺える。その内容は以下の文言から読み解くことができる。

 

ライフサイエンスの社会への還元を考える時、科学者の立場から言える事は、その成果の治療や福祉への転換が十分に行われてきたとは言い難いことである。これは、日本のライフサイエンス研究が、ヒトを理解する事を最終目標にしており、その成果を「人間」に還元することを明確な目標としてはいなかったためでもある。ライフサイエンスの研究成果を社会に還元し、その知見を社会の常識へと変換していくための方策として考えられるのは、「人間」を理解し、その健康と福祉に貢献することを目的とした「ヘルスサイエンス」という研究領域を設定し、推進することである。

 

つまり、ライフサイエンス(生命科学)研究は、自然科学、社会科学、人文科学、倫理学などを包括した研究体制を確立し、その研究成果や知見を社会の常識へと変換していくための方策として考えられるのが「ヘルスサイエンス(健康科学)」という研究領域である。したがって、ここに規定するヘルスサイエンスは、今まで明確にされていなかった「人間を対象としたライフサイエンスの応用研究」として位置付けるべきものであり、「ヘルスサイエンス」は、主にモデル生物を用いて行われるライフサイエンス研究の成果を、「人間」の疾患を理解するための基礎研究等に応用し、さらに、「人間」を対象とする産業および医療システムへ効率的かつ安全に移転するための研究として位置付けるべきであると提言している。

そして、この研究スキームは少なくとも3つの階層から構成され、第一には、モデル生物から「人間」へ翻訳するための基盤構築、第二には、「人間」へ効率的に転換する技術開発と研究システムプラットフォームの構築、第三には、先進医療技術が受容されるための社会構造の実現である・・・


1 日本学術会議日本学術会議は内閣府に所属する特別の国家機関であり、科学者コミュニティを代表して政府や行政に対して、勧告、要望、声明、提言などにより国の政策や学術に関して意見具申をする機能を持ち、人文・社会科学から生命科学、理学・工学など全ての学術分野を統括してその発展に寄与する。言い換えれば、日本学術会議は、我が国の学術全体を複眼的かつ俯瞰的に見ながら長期的に展望することを一つの使命としている。こうした考えに沿って、2002年12月、当時の吉川弘之会長の下で長期的で調和のとれた助言として報告書『日本の計画 Japan Perspective』を世に問うた。その骨子は、地球の物質的有限性と人間活動の拡大によって生じた問題を「行き詰まり問題」と捉え、「人類社会の持続を可能にする」ための青写真を描く必要性を説き、それを「解決する方法論」を見出すことを目指して様々な提言を行うものであった。



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