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インテグレイティブ・ペイシェント・エクスペリエンス [IPX ]

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エキスパート・ペイシェン・トプログラム(EPP/Expert Patients Programme)

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イギリスでは「セルフケア(self care)」が2000年代以降、国策の一つの柱とされてきた。米国でも、慢性疾患患者による「セルフマネジメント(self management)」の研究・実践が注力されてきており、その成果は日本をはじめ多くの国々に浸透している。

イギリスのセルフケア振興策のハイライトの一つが『エキスパート・ペイシェント・プログラム(Expert Patients Programme:EPP)』である。

『エキスパート・ペイシェント・プログラム(Expert Patients Programme:EPP)』は、「何らかの慢性疾患を持つ人々が、その症状に上手く対処しながら社会生活を送るセルフマネジメント・スキルを獲得するためにつくられたトレーニング・プログラム」であり、保健省の主導により2002年にスタートした。
 

このプログラムは、米国スタンフォード大学患者教育研究センターの「Kate Lorig(ケイト・ローリッグ博士)」らが開発した『慢性疾患セルフマネジメントプログラム(Chronic Disease Self-Management Program:CDSMP)』のメソッドをベースにしたものである。

 
EPPは、『素人主導(lay led)のプログラム』と言われており、医療の専門職従事者の介入がなく、運営全般を慢性疾患患者自身が行っている。EPPの所定の課程を修了した患者のうち、指導員を志す者が指導員養成の課程を終えると、プログラムにおいてファシリテーションに従事する「Trainer(訓練員)」となる。

プログラムの内容としては、自身による日常生活上の目標設定と、その達成を行う「問題解決(problem‐solving)」を中心に、医療専門職従事者とのコミュニケーションの取り方や、周囲の社会資源の有効な使い方などが取り扱われる。

先ほど「何らかの慢性疾患」と述べたのは、EPPが「疾患特異型(disease specific)」の活動ではなく、疾患の種類が異なる参加者が同じグループでセッションに取り組む『包括的セルフマネジメント(generic self management)』のスタイルを取っていることによる。
 

このような「素人主導(lay led)のプログラム」の理論的支柱となっているのが、『素人専門家(lay expertise)』すなわち「素人知という概念」である。

 
イギリス保健省(Department of Health)は早くより、こうした慢性疾患患者自身が長年疾患とともに生活してきた中で蓄積された経験/知識/スキルに着目し、この有用性を強調してきた。

イギリス保健省(Department of Health)の1999年の白書『Saving Lives: Our Healthier Nation』には、「糖尿病、関節炎、てんかんなどの慢性的症状を持つ人々は、自身の症状が悪化していく兆候を敏感に察知する高い能力を有している」という記述があり、「素人知」の活用を提唱している。
 

『エキスパート・ペイシェント・プログラム(Expert Patients Programme:EPP)』は米国のスタンフォード大学患者教育研究センターで開発されたCDSMPをベースにしているものであるが、オリジナル版(CDSMP)に比べてイギリス版(EPP)では、『素人専門家(lay expertise)』の強調度合いが大きく、名称「Expert Patients」からもそのことをうかがえる。

 
このプログラムは、疾病の管理から副作用への具体的な対処法、更には家庭問題を含めた日常生活へのアドバイスなど、自らの体験をふまえた当事者ならではの相互支援活動として、現在広く注目を集めている。

特に患者の中には、治療自体の長期化に加えて、将来の生活への不安などから一時的にではあれ、精神的に不安定な状態に陥るケースも少なくない。その際、医療者からだけではなく、かつて同様の問題を抱えた経験をもつ当事者からの支援は、たとえそれが共感をもって患者の話に耳を傾けるだけのものであったとしても、患者にとっては治療の意味を再確認し、闘病生活を送るうえでの大きな支えとなりうる。

また情報を提供する側の患者にとっても、「人の役に立てた」という自信と共に、自らの存在意義を再確認し、闘病生活を続けるためのモチベーションを得る貴重な機会となりうる。
 

このように『ヘルス・リテラシー』とは、「専門家」の支援を受けながらも「患者同士」が医療をとおして自立した主体として相互に結びつくこと、つまり患者が治療という共通の達成すべき目標に向けて協力し、また支えあう一連の社会活動となっているところに、この取り組みの大きな特徴とその意義とが認められる。

 
セルフマネジメントプログラムの柱『自己効力感理論(self-efficacy)』


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