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新たな再生医療状況

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4:幹細胞由来成長因子と組織再生

4:幹細胞由来成長因子と組織再生

 
移植した幹細胞が生体内で機能を発揮するためには、幹細胞が組織内の「ニッシェ※1」と呼ばれる特定の領域にたどり着き、増殖する必要がある。

幹細胞がニッシェへの生着する過程は「ホーミング※2」と呼ばれ、近年の研究では、移植細胞の「細胞内シグナル伝達※3」により、内在性の幹細胞が受傷部などに集積し、同部を治癒させるという『ホーミングの概念』が確立されはじめている。

また、移植細胞が直接作用するのではなく、細胞の生成する様々な成長因子などによって組織修復が起こるという「パラクライン効果※4」の考え方が一般的になりつつある。

最近では移植した幹細胞の生存率が低いという報告が多数みられるようになっており、組織再生において「移植した細胞の効果より、その細胞が分泌するタンパク質が重要な役割を果たしているのでは」という認識がなされるようになってきた。

つまり、幹細胞移植は決して効果的な治療法ではない場合の(適用分野によって)可能性もある。

細胞は、自ら分泌する「成長因子※5」 や「サイトカイン※6」 の自己分泌的(オートクライン)、あるいは傍分泌的(パラクライン)刺激により、シグナル伝達経路や「転写因子※7」を活性化し、タンパク質を分泌する。

このように細胞が機能することで組織再生が起こる。

※1ニッシェ:幹細胞について用いる場合、幹細胞が生着し、分化と自己複製をすることができる特別な領域(場)のことをいい、各臓器などに存在している。周囲は幹細胞の自己複製と分化を制御する支持細胞で構成されていて、そこから幹細胞の自己複製因子が供給されていると考えられている。

※2ホーミング効果:ホーミングとは、ある特定の生理学的な現象を必要とする離れた場所に移動する効果であり。体内に放出された幹細胞が、自動的に再生を必要としている場所を見つけだす効果を「ホーミング効果」と呼ぶ。

1.静脈内から投与された幹細胞は、末梢血循環器系に入る。2.リンパ、末梢血を通じて損傷部位に到達する。3.血管内皮に接着し、組織に浸潤する。4.増殖し、目的の細胞へと分化する。

幹細胞を投与すると、このような作用が働くと言われており、その作用メカニズムが明らかになったわけではないが、このような基礎及び臨床研究は、世界的に進められている。


※3細胞内シグナル伝達:(=情報のやり取り)、いかなる生命も周囲の環境に適応しなければならず、それは体内環境においても、個々の細胞においてすらも同様である。そしてその際には、何らかの形で情報を伝達しなければならない。この情報伝達機構をシグナル伝達機構と称し、通常、様々なシグナル分子によって担われる。それらへの応答として、細胞の運命や行動は決定される。細胞内に存在し、外部からの刺激(信号)を受け取って別の物質に伝える役割を持つ物質(セカンドメッセンジャー)を「細胞内シグナル伝達物質」と呼ぶ。シグナル伝達の基本的な流れとしては、細胞膜上・細胞質中の因子が次々にシグナルを受け渡しながら他の経路とも影響し合い(「クロストーク」という)、最終的には核内の転写因子による特定遺伝子の転写調節(さらにそれによる細胞の変化)や、アポトーシスによる細胞死などの効果をもたらす、というものとなる。この流れは、基本的に、細胞間で行なわれるものと、細胞内で行なわれるものとに分けることができる。この場合、細胞膜上の受容体において、細胞外シグナルから細胞内シグナルへの変換が行なわれる。細胞外シグナルの媒体は、ホルモンに代表されるようなシグナル分子であり、これに対し、細胞内シグナル分子はセカンドメッセンジャーと通称される。ただしステロイドホルモンなどの場合は、細胞外シグナル分子が細胞膜を透過し、そのまま細胞内シグナル分子として機能し、細胞質内の受容体に働きかけて、直接転写を制御する。このような反応は1ミリ秒ほどの時間で起きる。多くの場合、最初の刺激から過程が進むにつれ、関与する酵素や分子の数が増大する。このような反応の連鎖は「カスケード」と呼ばれ、弱い刺激から大きな反応を誘導すること(増幅作用)ができる。

※4パラクライン効果:細胞からの分泌物が大循環を介して遠方の細胞に作用する(エンドクライン)ではなく、直接拡散などにより近隣の細胞に作用すること。なお、分泌された物質が分泌した細胞そのものに作用する場合はオートクライン効果という。

※5成長因子:動物体内において、特定の細胞の増殖や分化を促進する内因性のタンパク質の総称である。増殖因子、細胞増殖因子(さいぼうぞうしょくいんし)などともいう。様々な細胞学的・生理学的過程の調節に働いており、標的細胞の表面の受容体タンパク質に特異的に結合することにより、細胞間の信号物質として働く。

※6サイトカイン:成長因子とサイトカインという用語は今日しばしば同義語のように扱われる。サイトカインは造血系や免疫系での体液を介した細胞間情報伝達の実体として明らかにされたものであり、一方、成長因子は固形組織の研究から明らかにされたものである。成長因子・増殖因子という語は増殖を促進することを意味するが、サイトカインはそのような意味を含まない。しかし、今日では各種研究成果が互いにつながった結果、造血系・免疫系のタンパク質が他の組織で、あるいは発生過程で用いられている例も明らかになった。G-CSFやGM-CSFなどのサイトカインは成長因子でもあるが、細胞増殖に対して抑制的影響を与えるサイトカインもあるし、Fasリガンドのように細胞死(アポトーシス)を引き起こすサイトカインさえある。

※7転写因子:転写因子はDNAの配列を認識・結合し、遺伝子の発現を制御するという基本的機能を持つ。遺伝子の転写を活性化あるいは逆に不活性化することで、細胞内の多くの反応で重要な役割を果たしている。転写因子は細胞の中で遺伝子の働きを調整することで、細胞の分化を促したり、反対に分化した細胞の初期化を促したり、また分化した細胞を直接、他の細胞へと変化させることもできる。


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