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新たな再生医療状況

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2:再生医療に「幹細胞」移植は本当に必要か?

2:再生医療に「幹細胞」移植は本当に必要か?

 

1993年 LangerとVacantiらは、生体の組織再生には『幹細胞(stem cell)』、『足場材料/細胞の足場(scaffold)』、『信号分子/増殖・成長因子(growth factor)』が必要であると唱えた。

この再生医療の三大要素が協調的に働きながら組織を再生させると言う考えである。

だが、いまやそのセントラルドグマが変わりつつある。

 

『足場材料』は文字どおり細胞活動の足場となる空間を提供する。適切な環境を提供すれば、生体組織は自然と再生に向かうとの考えに基づいている。

これまでに多くの「バイオマテリアル(コラーゲンやセラミックなど)」が医療の臨床現場に紹介されたが、足場材料だけでは組織再生はできず、事実、臨床の成績も芳しくないのが現状である。

そこで、より効率的に再生させるために「成長因子」や「サイトカイン」という『信号分子』を導入しようという考えが生まれた。

「信号分子」は内在性の幹細胞に働きかけて組織再生を促進する。さらに「成長因子」や「サイトカイン」は、遺伝子組み換え技術によって大量生産できる長所もある。

最近では「足場材料」と「信号分子」の『複合材料(骨形成蛋白、BMP-2とアテロコラーゲン)』がアメリカで商品化された。

しかし、臨床医の評判はいまひとつである。価格が高いわりに骨再生能が不安定で、術後に高度の浮腫が発生するからである。

最後に登場したのが『幹細胞』である。

「幹細胞」はもともと生体のなかに存在し、組織や臓器に破壊が生じると局所に集積して、自ら組織を再構築する、いわゆる「自然治癒」の過程で主役をなす細胞である。

当然、多分可能と増殖能を備えており、この幹細胞をいったん体外に取り出して大量に増殖させふたたび組織欠損部位に移植すれば、より強力に「自然治癒」が起こるのではないかと言うのが、『再生医療の基本概念』であり、理解しやすいきわめて魅力的な「治療戦略」である。

そこでこの戦略に沿って、より分化能と増殖能が高い細胞が探索され、あらゆる「幹細胞群の頂点」にたつのが『胚性幹細胞(ES細胞)』と『人工多能性幹細胞(iPS細胞)』である。

これらは「万能細胞」と言われるようにあらゆる細胞に分化でき、増殖能も著しく高い。

しかし、こうした優れた性能は『腫瘍化』と表裏の関係にあり、臨床で使用するのに慎重にならざるをえないのも事実であること、また、「iPS細胞」の登場によってここ数年の華々しい進展がみられたかのように映る「再生医療の世界」、あるいは「刺激惹起性多能性獲得細胞(STAP細胞)」の騒動を含め、『実用化(臨床応用)』への道は、安全性への懸念からむしろ遠のいたように思えてならない。


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