社会の規範と構造が急激に変化している今日、能力開発に対する関心はますます高まっている。
そうした時代状況を反映して市場には、「即効的な能力開発を約束する(標榜する)」、無数の関連書籍や研修、メディア(コンテンツ)の配信がところ狭しに存在する。
それらの大多数は一瞥するに、ある特定の技法や方法(ノウハウ)を紹介しながら、それこそが、「真の成功や成長を実現するための唯一の方法である」と主張する。
しかし、人間とは非常に多面的・重層的な存在であり、そうした少数の方法だけを実践することだけでは、そこに『真の治癒(変容)と成長(発達)』を実現することは到底ながら完結しない。
また、私たちは年齢を重ねる中で、非常に異なる「肉体的・精神的」な課題や問題と対峙することになるであろう。
また、個々の状況により、結婚や離婚、移動や転勤、怪我や病気など生活環境の変化に伴い、そこで必要となるアプローチは自ずと変化することになる。
上記を考慮するならば、ある特定の理論や方法を絶対化し、ただそれだけを忠実に実践していくことをよしとする発想は、あまりにも柔軟性を欠いた非効果的なものと言える。
むしろ、今日において必要とされるのは、「刻々と変化する時代状況のさなかで、真の充足を実現するために適切な実践の在り方を構想し、それを実際に継続的に実践することができる能力」にあると言える。
そこでは、「自身の欲求(動機)と状態(全方位)を的確に把握しながら、多様な資源(リソース)を創造的に統合(インテグラル)し、限りなく有効に活用すること」が必要となる。
ただし、自らの判断に基づいて実践の在り方を構想してゆく際、そこには、往々にして既存の権威を安易に否定して、あらゆる「型」を拒絶しようとする安易な発想に陥る危険がある。
そうした「危険を回避」し、世界に存在する豊穣な「叡智の恩恵」を統合的に活用できるためには、多様な「型」の共存を可能とする「包括的な枠組み」、つまり、全方位を見渡せる『インテグラル・マップ(統合地図)』を必要とする。
今日の目まぐるしく変化する時代のなかで、「自己の治癒と成長」を実現し、それを通して「世界へ貢献」していこうとする者、「人生の本質的な課題に創造的に応えていこう」とする者たちにとって、信頼に値する『ビック・ピクチャー(壮大な見取り図)』は、今や「必須の教養」となりうる。
by 老 子 陽 明
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