コンピタンス理論とは、ゲリー・ハメル教授(ロンドンビジネススクール:国際経営)とC.K.プラッド教授(ミシガン大学ビジネススクール:企業戦略、国際ビジネス)が主に日本企業の「強み」の研究に基づいて提唱する戦略論です。
コア・コンピタンスとは『顧客に対して、他社には提供できないような利益もたらすことのできる、企業内部に秘められた独自のスキルや技術の集合体』と定義され、具体例では、ホンダのエンジン技術、ソニーの小型化技術、シャープの薄型ディスプレイ技術などが挙げられます。
コア・コンピタンス形成の成功事例は、すべて5年~10年以上前から、未来を展望して長期的に企業力を鍛えてきた成果にほかなりません。
つまり、成功するためには、5年~10年先を見越して、自社のコア・コンピタンスを育て、補完し、未来の市場に備えなければならないのです。
バブル崩壊以降の厳しい経営環境の下、どうしても目先の利益や現状を前提とした業務の効率化に走りがちであすが、今こそ、未来のための競争を考えなければなりません。
“未来のための競争”とは、生まれつつある市場機会を自ら創造し、それを制覇(一人勝ち)する競争とも言えます。
未来に一番乗りするのに必要な“企業資質”をコンピタンス理論では次の4つとして整理しています。
(1) 未来のための競争が現在の競争と違うと認識する能力
(2) 未来の市場機会を発見する洞察力を築く仕組み
(3) 未来への長く険しい道程に向かって、会社全体を元気づける能力
(4) 過度のリスクを避けながら、競合他社を追い抜いて未来に一番乗りする能力
企業は目先の利益にとらわれることなく、未来の市場をリードすることを目指さなければなりません。
そして企業の独自の競争能力であるコア・コンピタンスを中心にして戦略を立て、それを実行していくこと(=コアコンピタンス経営)こそ、未来の競争に勝利する絶対的条件であるわけです。
コア・コンピタンス経営を推進する上でのポイントは以下の5点です。
(1) すでに保有しているコアコンピタンスの発見/確認
(2) コアコンピタンスの獲得・転移・進化・新規構築の計画
(3) コアコンピタンスの構築に向けた継続的努力(=深い意思統一、不屈の決意)
(4) コアコンピタンスの利活用に向けた社内への再配備
(5) 他社に抜きん出たコアコンピタンスの防御(コンピタンス開発能力の定期的レビュー)
つまり、コア・コンピタンスとは、企業内部で培ったさまざまな能力のうち、競争のための手段として最も有効なものを、「顧客に対して、他社には真似のできない自社ならではの価値を提供する、企業の中核的な力」であり、全社戦略においては、①ドメイン(事業を展開する領域) ②コア・コンピタンス ③資源配分(経営資源の全体的な最適化)に注目する必要があります。
企業のコア・コンピタンスは、ブランド、技術開発力、物流ネットワーク、生産方式、共通の価値観など、さまざまなものがありますが、例えばスポーツシューズ・メーカーのナイキの場合、他社の製品と比べて技術面、品質面で大きな差がない場合でも、消費者がナイキのシューズに対して高い価値を感じるのは、ブランドというコア・コンピタンスがあるからと言えます。
コア・コンピタンスを見極める場合、模倣可能性(Imitability)、移動可能性(Transferability)、代替可能性(Substitutability)、希少性(Scarcity)、耐久性(Durability)の5つの点について考える必要があり、どの要素が有効かは市場環境や競争環境によっても異なりますが、いったん築いた競争優位も、市場環境の変化とともに陳腐化する恐れがあるため、継続的な投資やコア・コンピタンスの再定義、新たな能力の育成などの努力は欠かせません。
∞ Meta Paradigm Dynamics のコア・コンピタンス
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