Ⅴ.今日、生まれようとしている『最も高度な自由と充足(フルネス)』

 

私たちにとっての「自由」とは一体どのようなものでしょう?

それは物質的、あるいは時間的、金銭的な自由でしょうか? それとも精神的なものを含むすべてを手にすることでしょうか?

また、それらを手にすることは現在、困難なことでしょうか?

 

現実的にその手段や方法を得ることや学ぶ機会は、今や無数に存在しています。

ただし、全ての人々が同程度に達成できるかどうかは疑う余地はありません。

しかし、ある一定の自由は既に存在し、その機会に対する自由と平等は随分と保障されているのが現状です。

 

今日、表面的な自由の獲得はあまり心配ないと言えます。

しかしながら、「本質的な自由」についてはあまり議論がなされていないのです!

本質的な自由を手にすることは「本質的な富」を得るに等しいのです。

もちろん、富にも表面的な富と「本質的な富」があるということです。

 

好き勝手にできる自由と富というものには、必ず限りが付きまといます! つまり、個的で私的で幅の狭い、「表面的で有限的な利己的自由と富」です。

『本質的な自由と富』とは、自分の意志にもとづいて「ノー」といえる『自由』があり、多く広やかに慈しみを与えられる「徳」の高い豊かな『富』のことです。

 

それらは、自分の成すべきことが遂行できる『自由』であり、たとえ今ここで金品をすべて失ったとしても、その後も直ちに再現・再生されるものが『富』なのです !!

 

私たちにとって、そのような「自由と富」は永遠の幻であるとするならば、現在の世界はいずれにせよ表面的で断片化された、低い文化性を証明することとなります。

私たちは「現実(リアリティ)」というと、たった一つしかないように考えています。

 

しかし実際は、「現実(リアリティ)」というのは、私たちの外側に「客観的」に転がっているものではなく、私たちの意識と環境との『共同創造』によってなるものなのです !!

 

それでは、私たちの「究極の関心」「究極の実在(リアリティ)」「究極の基底(グラウンド)」とはどのようなものなのかを示します。

表面的世界(これを第一層と呼ぶ)においては、自分(たち)の価値観だけが正しく、ほかの価値観は間違っていると考えます。

本質的世界(これを第二層と呼ぶ)においては、多くの他の価値観を認め、それを統合できるようになります。

そして、第二層においては、疎外(切り離し)から全体的で統合的な意味と価値観への跳躍が起こるのです!

 

現在の個人の世界観は、「第一層」を通過し、断片化、疎外、意味や価値の喪失という『負の側面』を克服して、「第二層」、つまり『統合(インテグラル)』に向かうことが可能な状態なのです !!

 

今日、文化の様々な側面でこうした方向が見え始めており、断片化と疎外と冷笑に満ちた表面的世界はその力を失い始めているのです !!

 

最後に、「身近なもの(ごく最近の時間・空間的な事象)を鋭い輪郭でとらえるよりも、広範なものを把握することによって、変動するもの(動いているもの=進化)を把握できる」ことを是非とも認識して下さい。そして、私たちに共通の『最も高度な自由と充足(フルネス)』なる世界は、いかにして創造されるべきかを全心身で 確認して下さい !!

 

第一に、偉大なる『進化の連鎖』のうち、低次のレベルから物質、感覚、知覚、衝動、感情、表象(シンボル)、概念などが、およそ14億年近くの年月をかけて進化してきたものなのです。

物質はビックバーンから、知覚は最初の生物から、衝動は最初の爬虫類から、感情は最初の哺乳類から、表象(シンボル)は最初の霊長類から、そして概念は最初の人類から発生しました。

 

意識レベル(存在と認識のレベル)から言えば、人間は、始原・古代(アルカイック)の類人猿から進化して、呪術的文化、権力・部族時代を経て、神話的・メンバーシップ社会へと移行し、合理性(近代)、多元性(現代)に至り、統合性、超統合性と、進化の段階は過去・現在・未来へと今も連続的に進行しているのです !!

 

ここでの認識は、「解釈的知識」は「経験的知識」とまったく同様に重要であること、現在が、自己、自民族・集団、世界、そしてコスモスへとアイデンティティを拡大していく段階であること、それは、死から不死、拘束から解放へ、苦悩から充足へ、幻想から覚醒へ、罪から救済へ、無知から知へ、すべては、私たちの現前する意識の中で何の努力も無しに起こっていると思われる事象(スピリット)に対し、十全に、そして統合的に『アクセス』することです !!

 

第二に、現代社会の経済上における物質と生活レベル、つまり「財とサービス」の段階(レベル)は、居住環境・空間的移動・コミュニケーション手段・娯楽・日常必需品・衣服・さらに枚挙にいとまがないほどの便利な道具類、これらのすべてが示すように、二千年を超える人類の歴史的経験である「欠乏」と「厳しい生活」は、ほんの一世代から二世代を経る間に、たいていは過去25年から30年の間にほとんど完全に姿を消してしまいました。

私たちが実際に、何の欠乏も知らないということは、もちろんあらゆる欲求がすでに満たされていることを意味するわけではありません。

私たちの欲求の大部分を占めるのは、さいわいなことに、そもそも物質的なものではないからです。

つまり、財を消費することによって満たしえるようなものでは全くないのです。

 

私たちの理念的な、美的な、芸術的な、精神的な、知的な、あるいは霊的(スピリチュアル)な欲求の多くは、商業主義に基づく商品やサービスによって完全に置き換えられるものではないからです !!

 

私の予測する今後の経済・市場の動向、つまり一般的表現による「次の大ブーム」は新しいテクノロジーでもなければ、新しい発明でもなく、そもそももはやモノではなく、まず間違いなく『人間そのもの』であり、健康、息災、食品、知識、教養、文化、広い意味での精神性・・・これらの全分野に共通する認識は『人間の、人間に対する配慮』です !!

 

第三に、最大に重要な創造(大仕事)は、「文化的な衝撃(インパクト)による第三文化創造」、つまり、『ベーシックインカム構想』です!

 

現段階において、私はこのような大きな企てに対する、政治家の力に多くを期待していません。

彼らは基本的に風見鶏であって、独創的な考えをもっているわけではないからです!

 

しかし、ベーシックインカム実現のためには、多くの運動を通じて(選挙もその一環)政治家を突き動かして行くほかありません!

 

ベーシックインカム構想を特定のイデオロギーに基づいて肯定あるいは否定することに意味はありません。

ベーシックインカム構想は一見社会主義的のように思われますが、むしろ自由主義的な発想に基づいています。

 

その意味で、ベーシックインカムが導入された後には、国民各自がどのような人生を選択するかはすべて個人的な自己責任の問題になるのです!

 

ベーシックインカムはむろん万能薬ではありません!

政治的問題は依然として政治問題として残されるでしょう。

しかし、現時点における財政政策(主に社会福祉政策)としてのベーシックインカムには限りない利点がもたらされます。

第一に、「貧困対策(餓死者のいない社会)」として、また一度限りの「定額給付金」や期間限定の公共事業とは異なる永続的な「景気対策」としても有効に働きます。

さらに大きな問題である「年金問題」の解決策として、そして「過疎化対策」や「少子化対策」にも大いに期待できます。

 

さらに視点を変えれば、ベーシックインカムは貧困と飢餓について新たな問題を提起した、経済学者アマルティア・センの唱導する「潜在能力」や「人間的発展」に通じるところがうかがえます!

 

ベーシックインカムが導入されれば、単に所得を得るための職場ではなく、やりがいのある仕事を見つけることが可能となり、ある者は「フリーランサー」としての道(起業や自営)の機会が容易になるでしょう。

その逆に企業経営者としての立場から、雇用者側の利点を指摘するならば、ベーシックインカムは資本主義が健全に生き延びる唯一の方策を与えるかもしれません。

 

そして何よりも、「文化的労働」である高齢化社会における「介護福祉労働」や「家庭内労働」、「養育と育成」あるいは「社会貢献活動」や「ボランティア活動」など、低賃金や無給労働などの分野への正当な賃金の支払いが可能となり、重労働や雇用確保の難しい産業分野における適切な賃金設定により、不当な雇用や現在の社会問題となっている「ブラック企業」などの是正などにも機能しうることが予想できます !!

 

最後に、ベーシックインカムそのものが最終的な到達目標ではけしてありません!読者の皆様には、常識的な発想、当たり前と思われていること(働いて所得を得て、その所得で生活を維持すること)をひとまずリセットして、ベーシックインカム構想が意味すること、現実にしようとしていることを自由な精神で受け止めて頂き、これを基盤とした新たな人間社会・文化の変容が、これまでの人類の歴史と進化を超越し、『最も高度な自由と充足(フルネス)』が希求されることを願う限りです !! 

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