Ⅰ.ベーシックインカム/新しい世界創造へのアプローチ

 

~ 揺りかご から 墓場まで

「市民全員 への 所得保証(ベーシックインカム)構想 の 実現化」~

 

1;『国民経済』の現状と免れない先行き !!

 

現在、多くの方々が膨大な情報社会の海に溺れながらも、本質的には『真の情報』に飢えています。

 

歴史的な見解において、産業革命以後のここ30年間に起こった重要な事実とは、第三革命、つまり情報革命による社会基盤の変更が『富の再分配』を人間全体にはもたらされていないことが第一に挙げられます。

第二に、財やサービスは過剰ともいえるほどに需要を上回っており、従来のテクノロジー&情報革命によるハイテクノロジーの融合と発展は、合理化と効率化の世界をとうに到達・超越したがゆえに、この先、政治家主導による「雇用創出」、あるいは「職場創出」という『完全雇用政策』もとっくに破綻しており、幻想のなにものでもないことが挙げられます。

第三に、先進諸国が掲げる『福祉的国家』の確立はすでにどの国も同程度に破綻しており、今後ますます格差社会と貧富の差は決定的に加速することとなる中、十分で過剰な財やサービスを尻目に「私たちは、豊かさの中で餓死する」といった場面に遭遇する日が目の前に及んでいるという事実です。

 

上記の重要な三つの事実(全社会的命題)は、『人間全体の尊厳』を著しく後退させる大きな要因となるでしょう。

 

2;私たちは、『経験の牢獄』に囚われている !!

 

数千年にわたって、人間の大小の共同体の基本的な生活の糧は、『奴隷の労働』によって賄われ、その後徐々に奴隷ではない自由人への労働委託に対し、対価が支払われるようになっていきました。

その結果、人々は労働対価によって自身と家族を多少なりとも養えるようになったのです。

そして、組織的な分業と生産の産業化にともなって、生産性は予想しえないほどに上昇しました。

人間の手による労働は、その後も創意に富む人々によってますます大規模に節約されつつあり、もはや以前のように人間によって処理されねばならない仕事は多くはないのです。

以前より、経済学者や社会学者の中でも先見の明のある人たちは、就労希望者全員に稼得労働を提供するという意味での『完全雇用』はもはや保証しえないことに注目しています。

しかしこの事実は、少なくとも公的(政治・官僚)には認知されておらず、またこの事実が社会生活の形成にいかなる結果をもたらすかについての認識も欠けているのです。

私たち国民についても、労働能力を有する者すべてが完全に雇用されるということがいかに「近代工業国家における過去の現象」であるかという認識に立って、経験の牢獄に囚われることなく、今こそ『労働と所得』の関係がいかに新たに秩序づけられうるかを考慮しなければならないでしょう・・・。

 

また、ここ数世紀以来、今日の私たちの世代ほど良い生活を送った世代はありません。

今日「過剰社会」という言葉が用いられるほど多くの財とサービスがもたらされたことはかつてありませんでした。

もう一つの問題は、私たちがこのことをどう考え、それに対してどう対処するかということです。

 

最近の数十年間に欲望の肥大化が進展しました。

それゆえ、各個人にとっては次のことが問題になります。

すなわち、「収入と生活水準とをどのように調整すればよいのか?」ということです。

 

現在、悲観的な気分が生じているのはまだまだ個人的レベルにおいてですが、これは今後、もっと広範な社会的な風潮として現れるでしょう。

 

 

3;いまや私たちは、こう問わなければならない !!

 

しかしながら、表面的なことに関しては私はなんら心配していません!

職場が失われるというのは、今日私たちが高い生産性を有していることの証明だからです。

生産量が減少するのではなく、甚大な生産性向上があるのです。

 

今や私たちは、こう問わなければなりません!

「いったい人間は何によっていきるのか?」

「仕事によって生きるのか、それとも財貨によっていきるのか?」と。

 

人間としての生活の可能性を問題にするのであれば、私たちの生活は「過剰状態」にあります。

唯一の問題は、『人間が収入を得るにはどうしたらよいか』です!

 

人々が自分の職場を失うことを嘆くとき、それはなによりも、「収入の道」が途絶えることを意味します。

これは、経済の第二の課題です。

第一の課題は「人々に財とサービスを提供すること」であり、第二の課題が「人々の所得を確保すること」なのです。

 

つまり私たちは、「合理的世界観」を超越し、新たなパラダイムによる『超合理的世界観(もしくは、統合的世界観)』時代へシフトすることによって、私たちは仕事の中に別の目標を探す必要があります !!

 

「何の仕事をするのか、自分の能力をどこで発揮するのか」という問いは、「どれだけの収入が得られるのか」という事実と区別されねばなりません。

労働と収入を関連付けることにこそ問題があるのです!

 

私たちはこれをまだ政治的課題として克服できていないだけなのです。

 

労働と収入を関連付けることをやめることは、政治と社会科学にとっては大きなチャレンジです !!

 

 

4;『超合理的(統合的)世界観』へのパラダイム転換 !!

 

現在ますます多くの国民が貧困ゆえに社会生活から締め出されているとすれば、それはもはや「社会の些細な欠陥」などと呼べるものではありません。

それは欠陥なのではなく、まさにスキャンダルであり、とっくに耐用年限を過ぎた社会システムの『原罪』と言うべきものです。

今日の『全面的な他給自足社会』において、社会に全く関与せずに単独で自立した生活(自給自足)を送る可能性はいささかもありません。

このような社会にあっては、個人の尊厳を守るだけではまったく不十分なのです!

 

国内の平和を維持することだけを考えてみても、私たちはさらに一歩進めて、社会に関与する可能性を各人の権利として憲法の中に本来は定めなければならない事項なのです。

そして、社会に関与する尊厳をもっともよく保証しえるのは、『無条件のベイシックインカム(所得保証)』です !!

 

人類はかつて「アダムとイブの原罪」によって労働へと運命づけられたとされます。

産業化の過程を経て、いまやついに楽園(パラダイス)の裏口に続く帰路を発見したというのに、私たちは相変わらず額に汗して日々のパンを稼がねばならないと思い込んでいるのです。

すべての人々は皆、こう考えているといえるでしょうか?

「人は働くことによってのみ、また何かの価値を生み出すことによってのみ、社会の中でなにがしかの価値があると認められ、それはまた自己価値をもうみだすのだ」と・・・。

 

私たちは、「主に収入を得るために働く」、と考えています。

たとえその仕事を好まざるともです。

しかし、まさにそれこそが問題なのです!

すなわち、原罪が後世に及ぼした最後の余波は、『収入は稼得労働によってのみ得られる』という誤った考え、つまり『働かざる者、食うべからず』という原罪です。

 

現実をよく直視して下さい。

今や私たちの経済は、労働と所得の分離を可能にする発展段階に達したという認識に立ってこそ、未来の展望が開かれると考えるべきなのです 。

私たちはもうそろそろ、この状況を把握しなければならないのです !!

 

私たちは「パラダイス的な状態」にあるのです。

問題は、社会が産出したものへのアクセスをすべての人々に可能にするにはどうしたらよいのか、ということです!

 

私たちは過去五千年にわたって欠乏に悩ませれてきましたが、この欠乏が遺伝子的に私たちに伝えられているかのようにみえます。

私たちは人類の歴史上初めて過剰の中に生きているにもかかわらず、多くの人々はこの新たな現実を正しく理解できずにいます。

人間はいわば経験の牢獄に囚われているのです !!

 

現在の経済システムでは、所得と労働が強固に結び付けられていますが、これはもはや時代に合わないのです。

私たちは「労働に対する権利」を必要としない。

私たちは『所得に対する権利』を必要としているのです。

つまり、『無条件のベーシックインカムに対する権利』が必要です !!

お役所的な面倒は一切なしに、無条件で、申請手続きもなく・・・『揺りかごから墓場まで』・・・人々の手に現金が支給されねばなりません。

 

そのために私たちは、ラディカルに、革命的に考えることを学ぶ必要があるのです !!

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