Ⅱ.スピリチュアルな混乱への処方箋「ITPプログラム」の欠陥

スピリチュアルな混乱に対して、サイコスピリチュアルな修練だけでなく、身体的な実践を含む「インテグラル・トランスフォーマティブ・プラクティス(統合的で変容的な実践/Integral Transformative Practice)以下ITPと略」の方法を提示するうえで、マイケル・マーフィーケン・ウィルバーはすぐれた貢献をなしてきた。

 

しかし、彼らの示した処方箋でさえ、現代の特徴である「マインド中心の成長モデル」を脱してはいない。

 

手短に言えば、ITPプログラムは、人間のすべての次元の内の「精神的(メンタル)」な面が考案した統合訓練になってしまうのである。

つまり、実践者のマインドが、自分の身体、本能、性(セクシュアリティ)、感性(ハート)、そして意識を発達させるのに一番つごうのよいと思えるプラクティスや技法を一方的に決定してしまうのである。

 

結局のところ、現代の教育・文化が、ほとんど排他的とまで言えるほどに「合理的なマインド」と、その「認識機能の発達」にのみ焦点を合わせており、人間のその他の次元の成熟にはほとんど注意が向けられていない。

もっとはっきり言えば、人間の身体や本能、性、感情の原初的な世界の成熟を軽んじている。

その結果、私たちの文化における大部分の人たちが、大人になるころには、かなり成熟した精神的機能をもっているものの、それらの原初的世界はほとんど発達しないままになっているのである。

 

現代の極端な「認知中心主義(マインド中心の成長モデル)」では、身体、本能、性、ハートが自律的に成熟するための空間が作り出されていない状態に加え、これらの世界が健全に進化するためには、精神(メンタル)によって制御される必要があるとの深い思い込みをかえって永続させることが問題なのである。

 

そして、いちばん悲劇的なことに、身体や本能、性、感情の永続的なコントロールや抑制が、これらの「非言語的な世界」の単なる未発達というだけでなく、しばし傷つき歪んだものとなり、退行的傾向が最初に出くわすのが、葛藤や恐れや混乱の層である。

 

それが悪循環に陥ると、人間のこれらの次元の自律的な成熟がより困難となり、より精神や外部からの方向づけを求める気持ちが永続的に正当化されることとなり、好ましくない症状もさまざまに生じるのである。

 

そこには、「ハートのチャクラから上」だけをスピリチュアリティとみなす傾向があり、その背後には非常に多くの歴史的、文脈的要因がある。

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