『もう一つの世界』と人生の自由な設計者』

 

「社会的とは仕事を作り出すこと」・・・と、政治家たちはこのお題目のもとに相も変わらず、ともかく「大枠条件」さえ整えば、「不足している職場」もまた、魔法を使って呼び戻せるのだと私たちに信じ込ませようとしています。

事実25年来、常に同じ一連の施策がなされ、賃金抑制、社会保険料分担金の引き下げ、減税、革新(イノベーション)と投資の促進、民営化と市場開放、貿易障壁の撤廃、資本取引の自由化などです。

それと並行して、儲けにならない事業や部門は、「職場を維持」するために、多額の助成金によって人為的に扶養されます。

 

つまり、このいわゆる『労働権のみの擁護』は、ひかえめに言っても、時代にそぐわないのです !!

 

社会福祉的、経済的、社会的、文化的(心的)な観点から見ておかしくなっている状況をふたたび安定させるためには、私たちはまったく別の権利が必要なのです。

すなわち、私たちは「所得に対する権利」を必要としてしています。

正確に言えば、『無条件のベーシックインカム』が必要なのです !!

 

ベーシックインカムは「合理化」によって職場を失った労働者を扶助する単なる一手段ではありません。

それをはるかに凌駕するものでありうるし、そうでなければなりません。

無条件のベーシックインカムの理念の背後にあるのは、社会的かつ社会福祉的な、わけても文化的な『パラダイム転換』そのものです !!

 

単に調節ねじを回して、その場を切り抜けるような小手先の手段ではもはやまったく追いつかないのです。

私たちのシステムがその根本のところで、もはやうまくいっていないことをそのような操作によって隠すことはできないのです !!

 

事実、何か根本的なところを変える必要があることを誰もが承知しています。

しかもそれは、私たちの社会を実際に束ねている私たちの文化にもとづいた変革がもとめられているのです !!

 

今日の「分業社会」にあっては、世界規模で、長期にわたって、誰もが他者に依存しています。

それゆえ、私たちの文化には「共同連帯性」があること、そしてこの共同連帯性の永続性に信頼を寄せること、この二つが未来を保証しかつ形成するために決定的に重要なのです。

私たちは皆これを文字どおり当てにしているのです。

この考え方、この感覚が私たちを欺くことはありません。

ところが、私たちはそこから誤った結論を引き出すのです!

 

ここでもう一度、まさに物質の供給という生存にかかわる問題に関して、私たちの生活が今日いかなる状況にあるかをちょっと思い浮かべてみれば、否応なく新しい考え方をしなければならないことが一目瞭然になるでしょう。

私たちの生活は百パーセント「他給自足」なのです。

 

つまり、私たちはみな自力で生き延びることを保障してくれるものを自分自身だけでは、もはや何一つ生産していないのです。

「他給自足経済」では、わが身を養い、社会に関与し貢献しえるためには、実りをもたらす庭の代わりに収入が必要なのです。

「他給自足社会」にあっては、この収入はどんなことがあっても保障されねばなりません!

現在の社会形態がそもそも機能し得るためには、国民にはもはや他の選択肢はないのです !!

 

社会参加をまず可能にするこの収入は、国民1人一人の「基本権」でなければならず、それゆえ、この収入は絶対に無条件で保障されねばなりません。

私たちは共同体として、すなわち国家の主権者として、私たちの庇護下に置こうとするすべての人間に無条件でこの収入が得られる権利を認めなければならないのです。

 

そうした『もう一つの世界』、ベーシックインカム社会の実現はいわば私たちの社会生活におけるのベースキャンプ(拠り所)となるでしょう。

 

国民はそこから出発して、彼ら自身の意志と責任で活動を開始することができるのです。

こうして基本的に国民は生存権が保障されるのであれば、場合によってはしばらくの間このベースキャンプに戻ってくることもできるわけです。

 

これだけでも、多くの人々の気持ちに、また旅立つ際の心的状況に大きな「安心感と希望」をもたらすでしょう。

 

さらに重大なのは、国家が日常生活から手を引くことによって、もはや些事に干渉することはなく、国民の要求が本当に正当化されうるものかどうか詮索されることもなく、無数のお役人を抱えた国家のイメージは国民生活から消えてゆくことでしょう。

 

そうなれば、国民は彼ら自身の能力と志向にしたがって『人生の自由な設計者(フリー・ランサー)』としての人生を自分自身の手に取り戻すことができるでしょう。

 

原則的にみて、ベーシックインカムを手にする国民は自分自身のテーマを追求する「企業家(起業家)」になるのだと言えるかもしれません。

 

国民は歴史的に見てもまったく新しい『もう一つの世界(オルタナティブワールド)』の誕生により、自己発展のための『自由裁量余地(フリーランス)』を手にするのです !!

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